29日目

「はわぁ……コレはまた……」

「ええと、何というのか……」

『………………見事に目に眩しい光景であるな』


 一同揃っての感想がコレである。……まぁ、当然といえば当然か。
 気合を入れてやってきた太陽の海《サンセットオーシャン》はその名に恥じぬ眩さを宿した海だったからである。

 曰く、海底に眠る黄金が輝いている。
 曰く、古代のテリメイン文明の太陽が沈んでいる。
 曰く、神聖なる海の神が住んでいる。

 そんな嘘か本当かも不明な噂を散々聞きながらもやってきた当の海域は、黄金色に光り輝き、熱気漂う常夏のような場所だった。眩しい。とにかく眩しい。確かにこれは黄金が沈んでるだの太陽が沈んでるだの言われてもおかしくはない。空も勿論だが、海そのものが何だか眩しい。幸い、目が潰れるほどでは無いがその光はジリジリと肌を焼く気配がする。
 しかもどうやら昼夜問わずこの感じらしい、というのは時間経過を確認する中でもはっきりしてきた事だった。参ったことに、この地には明確な夜がない。常にどこからとも言えぬ輝きが周囲を昼夜構わず照らし続けているからだ。


「……一つ言っていい?」

「何、エルゥさん」

「…………これ、寝れるかな??」

「ちょーっと怪しいかなぁ……」


 周囲の熱気やら何やらは酷いが、それでもレッドバロン程ではない。が、だからといって快適とは程遠い空間なのは確かである。漁船に被害はさほど無さそうだが、中に乗り込む人間にとっては厄介な場所と言えるのかもしれない。
 何と言っても明るすぎるのだ。あまりにも。落ち着いて身体を休めたくても休められるかどうか。


「これ、漁船のさ……あの屋根のところさ……前後もちゃんと布か何かで軽く塞いでやらないと駄目かもしれないね。眩しくて寝られそうにないもの」

「でもそれだと、熱気がこもって大変じゃないかな? 気分悪くなるかも」

『快適な環境が欲しいならば我に願えば――』

「うーん……それだったら目元だけ布で覆って寝るしか無いかなぁ。ずれないように紐とかで頭に固定して」

「それが一番妥当かもしれないね。材料、あるっけ?」

「確かいらない布系が幾らか……」

『汝ら、我を無視するとは良い度胸であるな!?』


 深刻な表情で話し合う二人の間に割り込む魔神のランプ。
 しかし、二人は慌てたようにその姿から視線をそらした。









『………………何故、汝らは我を見ようとせんのだ?』


 流石に怪訝げに問うランプの魔人へと、二人はそれぞれに告げる。


「ごめんねランプさん……かなり眩しいの。正直、目に痛いぐらい。」

「そうそう。周囲の光をランプがやたらめったら反射してさ。わりと目に毒なんだよね。マジで。」

『むううぅぅ……何だか納得がいかぬのだがっ』


 不満げに唸るランプの魔人からやはり視線をそらしつつ、人間組はため息を落とす。
 今までの海域の例に漏れず、今回も一筋縄でいきそうもない……そんな気配を、ひしひしと感じながら。