蒼い蒼い海を、偶に幻視する。
澄み切った海の中は色鮮やかなサンゴと魚達。
残された古の時代の名残の合間に溢れる命。
大地には緑の木々が生い茂り、沢山の獣と……そして竜。
その全てを見守る、空の青と海の蒼。
二つの〝あお〟に挟まれて、そこで笑って手を差し伸べてくれた笑顔を。
『……エルゥ! ホラ、おいでよ!!』
まるで太陽のように眩い笑顔だった。
近付きすぎれば焼け焦がされてしまう気がした。
その鮮やかさは目に痛くて、眩しくて、直視すらできなかったというのに。
その太陽は気にした様子もなく、エールステゥの手をとった。
何度でも、何度でも。
――…全ては、遠い昔の話だ。
もう失われた過去。
届かない場所。
声を聴くことも出来ない誰か。
思い出せば、今でもずっと、胸の奥がズキリと悲鳴を上げる。
「…………■■■■■■」
微かな、蚊の鳴くような声で。
夢に微睡みつつ、エールステゥは囁いた。
大切な、大切な……その名前を。