22日目

 蒼い蒼い海を、偶に幻視する。



 澄み切った海の中は色鮮やかなサンゴと魚達。
 残された古の時代の名残の合間に溢れる命。
 大地には緑の木々が生い茂り、沢山の獣と……そして竜。

 その全てを見守る、空の青と海の蒼。

 二つの〝あお〟に挟まれて、そこで笑って手を差し伸べてくれた笑顔を。


『……エルゥ! ホラ、おいでよ!!』


 まるで太陽のように眩い笑顔だった。
 近付きすぎれば焼け焦がされてしまう気がした。
 その鮮やかさは目に痛くて、眩しくて、直視すらできなかったというのに。

 その太陽は気にした様子もなく、エールステゥの手をとった。
 何度でも、何度でも。





 ――…全ては、遠い昔の話だ。

 もう失われた過去。
 届かない場所。
 声を聴くことも出来ない誰か。

 思い出せば、今でもずっと、胸の奥がズキリと悲鳴を上げる。


「…………■■■■■■」


 微かな、蚊の鳴くような声で。
 夢に微睡みつつ、エールステゥは囁いた。

 大切な、大切な……その名前を。